2019対談テーマは「子どもを育てるということ」
5月27日@比良天満宮
今回の対談は、私たちに共通する「子どもを育てるということ」について、先生の立場、親の目線、いろんな角度からお話ししていただきました。
少し長くなりましたが・・・どうぞ最後までお読みください。
目次 [開閉]
「ズバリ!どんな子どもでしたか?」
広報部・まず、初めにお二人の子どもの頃のお話をお聞かせください。ズバリ、小学生の頃はどんな子どもでしたか?
PTA会長(以下会長)・うーん自分で言うのもなんやけど、優等生タイプの、大人から見たら模範少年みたいな感じやったと思います。
校長先生(以下校長)・ハイ、え〜と、結構男の子とか引き連れて遊んでました。引き連れると言うか、従えると言うか、言うこと聞かせると言うか・・・(笑)見るからに生意気な女の子。
会長・僕は四人兄弟の末っ子で、周りにお手本がいたせいで要領よくやってたと思うんだけど。
友達のうちへ遊びに行ってもそこのお家のおばあちゃんが、僕には「もう宿題も済ませてきたんやろう」って、友達には「早く宿題やりなさいよ」って言われるんですよ、本当はやってないんですけども。
でも友達の前でそう言われるのはすごい嫌で。悪いこともあんまできないし、プレッシャーは割と大きかったような気がします。自分がそうだったんで、自分の子ども達には少々やんちゃでもいいと思ってて、実際奔放に育ってるなと感じてます。
校長・私は自分の子どもの頃のことはだいぶ前なので忘れてしまいましたけども(笑)
四姉妹の三番目で、「細雪」(※2)でいうと主役なんです(笑)女の中で育ったので、子どもは男の子二人でしたから戸惑いもあったかもしれません。自分の子育てもだいぶ昔のことで忘れてしまったんですけど(笑)
※2「細雪」
引用元:谷崎潤一郎『細雪(上)』
「鶴の恩返しの、鶴のようなもの」
校長・私は入学説明会の時などによく親御さんに言うんですけど、子育ては鶴の恩返しの鶴のようなものだと。
広報部員・!!・・・おつうですか?!
校長・自分の羽を抜いてひとつの素晴らしい織物を織っていくようだと。
こんなに苦労してます!こんなに頑張ってます!なんて誰彼に言うものでもないし、なかなか世の中に認めてもらえるものではないけど、そうやって織りあがったものは本当に素晴らしいものだと思うので、子育て頑張りましょうね!って言っています。
お腹にできた時から、ちゃんと生まれるかな?生まれたら健やかに育つかな?立つかな?歩くかな?喋るかな?友達できるかな?学校でついていけるかな?進学できるかな?結婚できるかな?って
親にとっては心配の種なんだけれどもやっぱりそれがあるから人生に深みも出てくるし
生きがいや楽しさも出てくるものやなぁ・・・と思えるのは、・・・今の歳になったからかな?と思います(笑)
「親にとっては、心配の種ではあるけれど」
広報部員・あのう・・・心配の種って、いろいろあると思うんですけど、心配で気持ちが潰されそうに思うことってありました?
校長・私は子どもが二人とも熱性けいれんやってて。上の子なんか二回もやってて。それこそもうびっくりして・・・。
会長・うちも長男がそんなんありました。死ぬんじゃないかと思いますよね・・・。
校長・「心配」というとまず病気しないで成長してくれるか?っていうところですよね。
会長・そうですね。うちの場合は長男が保育園の年長くらいの頃にみんなとだいぶ変わってるよね、と保護者仲間からアドバイスしてもらって。
それまでは変わってて面白いなくらいに思ってたんですけど、保育園の先生からもなかなかみんなと一緒のことができないとか、決まったところに座っていられないとか、その頃からだんだん聞くようになって、それから発達障害や自閉症について勉強して・・・。
それで小学校に上がったんだけどなかなか学校になじめない、行けない、っていうのが一年半くらい続いて。そこが、今までで一番しんどかったところですね。
勉強についていけへんとかそういうことじゃなくて、学校に行かせるだけで親も子どもも、家族みんながヘトヘトに疲れはててしまうような・・・もちろん学校で色々学んで成長していくんだけど、「そこまでして行かせなあかんもんなんかな」って思うくらい、毎朝、毎夕方、夜も、ずっと戦いで、先が見えなくて自分もイライラして子どもに当たってしまったりして。
自分も辛かったけど子どもにも申し訳ないことしたなって感じてるんですけども。
「私と子どもと、個性の違いを認めていくこと」
会長・でも学校が環境を整えてくれたり、本人もできることが少しずつ増えていって
三年生からは特別支援学級でそこからは人が変わったみたいに楽しそうに行ってくれるようになって
電車通学できるようになって、五年になって弟が入学して弟を引っ張っていけるようになって・・・って学校に前向きに行ってくれるようになって、親が何かしたってことはないんだけど
子どもがどんどん成長して行って、今は気持ちよく子どもを送り出せるっていう、そんな感じです。まあ毎朝バタバタはしますけどね(笑)
校長・それは、やっぱり親御さんも子どもさんと一緒に成長しはったんやと、思います。
会長・後から振り返ってやと、そう感じられるのかもしれませんけど、その時は・・・(笑)
校長・あのう・・・プライベートな話だけれど大丈夫ですか?
会長・僕は、そうですね、こういうことも他の保護者さんとも共有していけたらいいなと思っていますし。
校長・発達障害や、自閉症というのは、私は支援が必要な個性だと思っています。
でもその個性の違いをどのように認めていくかって、親として葛藤があると思うんです。
あのう、私は長男の描いた絵を保育園で見たときに…、教師してるんでね、この年齢ならこのくらいの絵が描けるだろうなというのが自分の中にあって、でも長男の絵を見たときに、えっ!!なんでうちの子こんな絵なん?!って・・・(笑)
一同・あはははは
校長・どうしても他のお子さんと比べる気持ちがあって、それを受け入れるのに時間がかかったっていう。
自分と子どもは違う一人の人格者やと言いながらも、「えー自分はできたのになんでできへんの?」とか「自分ならこうするのに」とか、そこを認めるようになるには時間がかかるかなって思うんですよね。
「当たり前ってなんだろう?学校の根本としての支援学級」
会長・そうですね、僕も最初は子どもが当たり前のことをなかなかしようとしないので、なんで当たり前のことができへんのかなって思ってたんですけど
自閉症について勉強していくと、逆に自分が子どもの頃に一所懸命やってた「当たり前」って、狭い世界の「当たり前」だったんだなと感じるようになって。今は、「当たり前」にとらわれない才能っていうのを逆に教えてもらっています。
長男だけじゃなく次男にも。
校長・私は、初めて特別支援学級を担任した時に、重度の障害があって言葉もしゃべれない書けないっていうお子さんを担任したんです。
その子がほとんど初対面なのに、入学式の時にずうっと私におんぶされて、ずうっと引っ付いてくれてるんですね。
私はその時、この子は、ほんのちょっとしか会ってないのに私のことを信頼してくれてる!って感激したんですけど、でも実はその子はただ単におんぶが好きなだけやったんですけどね(笑)
それからその子たちと一緒に勉強したんですけど、そう、本当に見方が違う、本当に純粋で、いろんなことを発見して教えてくれる。
その子が大きくなって北大津養護学校の高等部の卒業の年の学習発表会に行ったんです。
そしたら、もう、全然変わらないんですよ。自分で自由奔放に舞台の上でやってはるんですよね。
私はそれを見て、これはすごいって思ってね。周りが型にはめようとやっても、理屈でやろうとしても変わらないんです。すごいなあって、感激しました。
いろんなことに気づかせてくれる支援学級は、学校の根本として大事にして行かなあかんと思っています。
「本当の意味での成長」
会長・みんなの中でうまくやっていこうと思うと、我慢することとか、空気を読んだり足並みをそろえることが上手になっていって、自分の中にあることを表に出す、っていうことをどんどん弱めてしまうというか、失ってしまうような・・・。
それが成長の過程であるというようなイメージがどうしても強いけど、でも本当の意味での成長って、自分の中にあるものをちゃんと出せて、それが周りの人の役に立ったり、自分の喜びになったり、みんなで意見を交換しあって良い社会を作っていける力を身につけることだと思うんですけど。
我慢する事を先に身に付けてしまうと出せるはずのものが出せなくなってしまうような部分もあるんかなって、思うんですよね。
みんなそれぞれ「あなたにしかできない」っていうものがあると思うし、そこに自分でちゃんと気づいていてその力を発揮できるようになれたら、と思いますね。
校長・なかなかそういうところは学校だけでは難しいと思うんです。
だから、家庭教育や学校教育のバランスとか、それぞれの役割があると思います。
教育は四割しかその子に働きかけることはできない、後の六割は環境やその子の持ってるものと言われています。
でも、だったら私はその四割にもっと値打ちを、教職のプロとしての意地を見せて子どもを育てて行こうと思ってます。
今、学校教育で求められているものがすごく多くて先生たちはなかなかしんどい部分もありますけど・・・。
「親と教師と、役割は違っても」
会長・子どもには自由にのびのびと自分の意見や特性を出せるようになってほしいと思うんですけど、一方では、いざという時の忍耐強さとか、周りとの調和を大事にして欲しいなって、思ってます。
そういうところのバランスの持ち方が人間にとって、すごく大事なんじゃないかなと思ってまして。自分もそういう人間でありたいと思ってますし、子どもたちにも、今すぐには難しいですけども・・・そういう事ができる人間になってほしいと思ってるんですよね。
校長・そうですよね、そういうところは大事やと思います。
どうしても学校というのは「集団」というところになってくるので、「集団」の中で力が発揮できる、自分の居場所が見つけられる、そういう安定した基盤を家庭や地域で育てていただいたら、それで任せてもらったら、学校教育は更に充実したものになるんやないかなという風に思っています。
その上での「学ぶ意欲」は学校で育てていかなあかんと思うんですよね。
教師としてプロとして、教えるということに関してはご家庭の方とは違うスキルや資質をもっているべきだし、それを生かせるような学校にしていくべきと思っていますから、子どもが「学んで楽しい」「こんなことを学びたい」と思えるような、そういう気持ちを学校教育の方で育てていきたいと思っています。
親と教師と、それぞれ役割は違うんだけども、子どもが幸せになってほしいと考えていく気持ちは同じだと思うので、そこを情報交換してお互いに想像力を持ちながらやっていきましょうって、いうことです。
「風に乗り、風に向かい、風を起こす小松っ子」
会長・先生が作られた今年の学校教育目標「風に乗り、風に向かい、風を起こす小松っ子」って良いのを掲げてくれはったなと思います。
今、グローバルな人材を!とか言われているけど、結局、グローバルに活躍できる人材って、決して英語を話せるとかではなくてどこにいっても「自分をちゃんと出せる人(風を起こせる人)」だと思いますね。
校長・学校教育目標の「風を起こす」って、そこを狙ってるんです。
行動するっていうか、大きな願いがあって、社会を変革していくっていう思いがあって、そこに向かうために義務教育、とくに小学校教育一年生から六年生までは生涯において一番大切なところだから「風を起こす」ための力をつけて、送り出してあげたいなと思ってるんですよね。
どういう状況になっても自分を見失わずに、はっきりと進むべき道と意見を持てる子を育ていきたいと思っています。
会長・僕らPTAもその風に乗っからせてもらう感じで目標(※3)をたてました!
※3教育目標・校長先生の掲げる今年度の小松小の教育目標「風に乗り、風に向かい、風を起こす小松っ子」にのっかり、今年度のPTA活動テーマは「親だって、乗ろう、起こそう、新しい風」になりました。
「できるところからみんなで」
校長・できるところからみんなでやっていきたいなと思っているところです。
私は、「センス」が大事なんじゃないかと思っています。ハイテクではなくハイセンスです。
科学でも「これは、なにか違うかもしれない」とか「これは面白いことになりそうだ」とか、そういうのがこれから必要になってくるんじゃないかと思うんです。
小松小で沢山やっている「体験学習」「実際に自分でやってみる」五感で感じる学習というのが、そのセンスを養うのに大切だし「その子なりの」というところにつながると思ってるんです。
会長・そうですね、PTAでも何かできないかと思っていて、保護者同士で繋がれるような場を少しでも作っていけたらなと思っています。
やり方は検討中ですが、そういう形でもPTAが役立てばと考えていて、これもまた先生方にもアドバイスいただければと思ってます。
僕らの子どものころは保育園とか幼稚園のころからずっと同じ友達で同じ学校に通って、遊ぶのも大体一緒。
だから周りの大人がお互いの子どもを知ってたと思うんですが、今は学校上がってから初めましての親御さんとか顔合わせるけどしゃべったことがないとか、そういう保護者さんも多いと思うんで。
校長・もちろん、学校にも相談にきてもらっていいんですよ!
広報部・保護者間で気軽に話ができたり、学校にも相談できると、子育てがしんどい時に救われるところがあると思います。
「どんなときも子どもを応援できる」
校長・そうですね、最終的に子どもが自分でどうやって目指すところを見つけるかっていうのは色々おぜん立てしてもなかなか難しい所はあるとは思うんですね。
話をしていく中で何となく気が付いたり、次に生かせるものが出てくると思うんで、こうやって話せることが大事だと思うんですよね。
でも…やっぱり子どもっていつかどこかで親がびっくりするような根性を出す時とか、決断をする時というのが、結構出てくると思いますよ。
親はその時がきてもうろたえないようにしておく。
子どもはなかなか思ったようには育たないですし、自分自身をかえりみても親の望んだようには育ってない、まぁそれがまた面白いのかもしれないし。
会長・僕も、(息子と)全然タイプが違うんで、僕が子どもの時ならこうしたとか僕がこの子の立場ならこうするなとか、どうしても小っちゃい時は望むとこがあったんですけど、最近それを押し付けないようになったら気が楽ですし、そのほうが子どもも自分も楽しいですね。
それはあきらめるとかそういうことではなくて、僕よりきっとこの子のほうがおもしろいことを思いつくに違いないっていう尊敬の念に近いですね。
校長・本当に、子どもが自分で考えてやる事が一番強いです。
その子がどうやってそこへ自分を持って行くのかはわからないけれども、どんな場合でも子どもを応援できるだけの度胸と器量を持てるように、大人も成長していかないとあかんと思います。
会長さんが言ってはるみたいに子どもは自分とは違う人格があって一人の人間として尊重していかないとダメだけれども、そこに愛情と責任を持っていたいなと思います。
子育てはほんまに大変やけれども、子育てをされている親御さんはどこかに自負をもって望んでいってほしいと思いますし、そういう意味の両輪として学校教育が持っている役割はすごく大きいと思うので私たちも真摯に頑張っていきたいと思っています。
◎比良天満宮について、詳しくは↓
引用元:滋賀県北比良 天満宮、樹下神社